―エマオへの途上にて―  辻  喜男

我が家の玄関に古い一枚の額絵が飾られています。この額絵は私たち夫婦の結婚祝いとして、職場の仲間から贈られたものです。結婚以来五十数年間、何回かの転居を潜り抜けて今も飾られています。
先日何気なく見ると、額縁がずれていることに気がつきました。久しぶりに壁から降ろして額縁のゆるみを直し、ほこりを取り除いて、あらためて絵を眺めました。
その絵は、聖書に記されている「エマオへの道」を題材にして描かれたものです。
大木に囲まれた森の中を歩く三人の男の後ろ姿が描かれています。その真ん中の男が右手を挙げ、遠くを指しながら何か話している様子です。そして男の指さす方向は、木々の間から青空が広がり、太陽が輝いているように見えます。
聖書はこの人物が復活後のイエス・キリストであると語っています。そして左右に立つ二人の男は、このイエス・キリストによって「人生一歩先は闇」ではなく、その人生の一歩先にある光を見つけることができたことを描いているのです。
この「エマオへの道」の話は、私たちにもイエス・キリストの十字架の死と復活によって、失望から希望へ、暗闇から光に移されることを教えています。
さて、我が家の古い額絵は、五十数年ここまで付き合ってきてくれました。私たち夫婦も絵の中で、イエス・キリストが指し示す「ひかり」に導かれて来たように思います。
これからも、もう一つの聖書の約束である <夕暮れ時に光がある> とうことばを握りしめて歩み続けたいと思っています。

 

 

 

 


2023年01月29日