バラではなくイバラ 藤井 貴

毎日の楽しみは1時間いろいろ考えながら散歩することで、靱公園を散歩の折り返し地点としている。公園内にはバラ園があり、春と秋に2度咲いて訪問者を楽しませてくれる。秋に咲いたバラは1月まで咲いており、1月末に春咲きのために剪定されている。
 バラの栽培は手間がかかり、靱公園でもこまめに丁寧に栽培されているのが、散歩しているとよくわかる。バラの栽培が難しいのは、バラは病気にかかりやすい、害虫もバラが大好き、水やりのしすぎで根腐れに、剪定が難しい、つるバラは誘引が難しいから。

さて、聖書の66巻にはバラは出てこない。フェニキアバラという初夏に白い3cmくらいの花を咲かせる野生バラは聖書の地に自生しているようであるが、聖書に登場するのは同じバラ科のイバラ(茨)である。この茨はエルサレム周辺でも簡単に見つかるイスラエル原産のバラ科の常緑樹「トゲワレモコウ」(トゲハマナツメ)※の可能性が高く、そのとげが長く硬いので、今でも有刺鉄線のように使われ、侵入防止の柵にからめたり、羊を守る石垣の上に置いて、獣の侵入を防ぐのに使用されている。

最初の人アダムとエバが罪を犯したとき、

「また、人に言われた。『あなたが妻の声に聞き従い、食べてはならないとわたしが命じておいた木から食べたので、大地は、あなたのゆえにのろわれる。あなたは一生の間、苦しんでそこから食を得ることになる。大地は、あなたに対して茨とあざみを生えさせ、あなたは野の草を食べる』」(創世記3:17-18)

と茨とあざみによる土地の呪いが宣言された。
また遡ってイエス・キリストの十字架では、ローマの兵士は知らずにこの茨を取って冠に編み、イエスにかぶせている。

「それから彼らは茨で冠を編んでイエスの頭に置き、右手に葦の棒を持たせた。そしてイエスの前にひざまずき、『ユダヤ人の王様、万歳』と言って、からかった。」マタイの福音書 27章29節

「キリストは、ご自分が私たちのためにのろわれた者となることで、私たちを律法ののろいから贖い出してくださいました。『木にかけられた者はみな、のろわれている』と書いてあるからです。」ガラテヤ人への手紙 3章13節

最初の人アダムはそして私たち人類は罪を犯したが、キリストは完全な贖いのためのいけにえとなって、罪の呪いから私たちを贖いだしてくださいました。イバラはこのように、聖書の中で重要な場面に登場している植物である。

※トゲワレモコウは、トゲハマナツメ(別名:キリストイバラ)とともに、イエスが処刑された時に頭にかぶせられた茨の冠の「イバラ」の可能性がある。(廣部千恵子『新聖書植物図鑑』, 31参照)

※写真 ↑ 靱公園のバラ園(2023.2.4)

 

 

 


2023年02月06日